『黄色い風の教団2』
「あ
れ・・・ここは・・・?」
気が付いたら、僕は薄暗い部屋の中にいた。
最初、処刑される前に、意識が飛んだのかとも思った。
あの時と同じように、両手両足が拘束され、ベッドに仰向けに寝かされていたから。
でも、あのジメジメした地下牢の時とは違い、拘束具と体の間には布が当てられ、
ベッドも幾分柔らかいものだった。これは一体?

・・・確か僕は、処刑されて・・・でも、執行役である神官の女の子に助けられて・・・
そして脱出の船の中で、強烈な・・・・

「気が付かれました?」
部屋の片隅から声がした。首を回してそちらを見る。
近寄ってきた女の子の姿に、その強烈な「オナラ」で失神させられた記憶が蘇る。
背中越しに向けられる冷たい視線、柔らかくて巨大なお尻。この世の物とは思えない匂い・・・。
恐怖と興奮とが同時に押し寄せ、僕は身体が強張るのが分かった。

「先ほどは手荒な真似をして、ごめんなさい」
しかし、ベッドサイドの椅子に腰掛けて僕を見つめる彼女は、冷徹な処刑人ではなく、
船の中で見せた悪戯っぽい笑顔の可愛らしい少女だった。
「ここは既に神殿の奥深く、安全な場所です」
「そっか・・・僕は逃げ延びたんだ。」
これで当分、命の心配はしなくてすみそうだ。未だ濡れ衣を着せられている事に
変わりはないけれど・・・。

いや・・・命の危険は去っていない。
「ねえ・・これ」
思い切って訊いてみる。
「何で僕、また縛られてんの?」
女の子はクスリと笑う。

「ごめんなさい、ちょっと苦しいかも知れませんが・・・
でも、あなたには耐え抜いて頂きたいんです」
彼女はそういって後ろを向いた。質素なドレスのような軽装で、その短く詰めた裾から
ボリュームのあるヒップが覗く。
・・・凄くイヤな予感が・・・・・・・

「貴方には、洗礼を受けて頂きます」

「ま・・・まさかあの、オナラで・・・」
「・・・はい、私の『風』で」
心なしか、肩越しに見せる顔が赤い。
ちょっと可愛いかも・・・いや、それどころじゃない!!
「な、なんでっ!?僕はやっぱり処刑されるのか!?」
暴れてもベッドをギシギシと軋ませるばかりで、逃げられそうも無い。
僕は事態が飲み込めず、半ばパニックを起こしていた。

その時、彼女が腰を屈めた。
突き出されたお尻がゆっくりと、僕の顔めがけて近づいてくる!
や・・・・やられる!!
僕は眼を逸らすことすらできず、ただ、迫る肉塊を見つめていた。

それは弾力を秘めた重さで、僕の鼻先に圧し掛かる。
尻割れが視界を横断するように迫り、顔面を塞がれた。
まだ・・・今はまだ、あのおぞましい匂いはしない。むしろ、彼女の柔肌の匂いとぬくもりとに
包まれて、気持ちいいくらいだ。でも・・・
「んっ!ん~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」
イヤだ!死にたくない!!
僕は沸きあがる恐怖に呼吸を乱しながら、必死に抵抗した。

その時、暴れる僕の舌先が、彼女の尻割れをかすめた。
「きゃっ・・・」
目の前でお尻がプルンと揺れ、彼女が腰を引いて、恨めしそうにこちらを見る。
「恐れないで・・下さい・・・」
「そ、そんなこと言われても・・・」
「あなたさえ耐え抜くことが出来れば、命を落とすようなことはありません」
「無茶だよ!それに一体、何で・・・!?」
「・・・・・・・」
彼女は、ふと何か考える素振りを見せて、言った。
「あなたは一度、我が教団の儀式を生き延びています。
ですがあれは、いわば門外不出の秘伝・・・本来ならば、あれを知った者を生かしておくわけには
いかないのです」
「そ、それじゃあ」
「・・・ですが貴方の場合、罪人ではないので、もともと儀式の対象からは外れるはずです。
しかし戒律を破るわけにもいきませんので・・・」

彼女は再び、豊満なお尻を僕の顔に近づけて、僕のおびえた視線を釘付けにした。
「貴方には洗礼を受けていただき、わたしたちの教団に入っていただくことが唯一の道であると、
大神官様は仰られました」
「そ、そんな・・・」
それじゃあ、どのみち僕は彼女のオナラを嗅がされるってことか!?

「怖がることはありません。穢れた魂を浄化する場合とは違いますので、
気をしっかりとお持ちになれば、『黄色い風の女神』様もあなたの魂をお召しになったりは
なさいません。それとも・・・」
「・・・むぐっ!?」
彼女のお尻が僕の顔に沈められた。彼女の冷酷な印象のためか、少し冷たく感じる・・・。
「浄化をお望みですか・・・?」
透き通った綺麗な声で、僕に生か死かの選択を迫る。
もはや僕に選択の余地は無かった・・・・・・。


彼女は後ろ向きに僕に跨り、お尻を顔へと近づけた。
「では・・・・・・」
ゴクリ。
ゆっくりと、巨大な肉塊が目の前に迫り、著しく視界を遮る。
上質の絹か、皮をむいたゆで卵のような肌触りで、僕の鼻先は一番深い一点へと接した。
「耐え抜いて、下さいね・・・」
蕾がかすかに動くのを感じて・・・・・・

『プ・・・プシュウ~~~~~~~~~~~~~~~~~~・・・・・・・』
「!!!!!!!!」
う゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
や、やっぱり臭いっ!!

『プ、プス、プスゥ~~~~~~~~~~~~~~・・・・・・・・』
「ん・・・っかぁ、はっ・・・・ぁぁ・・・・・・」
鼻を駆け巡る匂いに蹂躙されて・・・目の前が暗くなる・・・!!でも・・・

『プゥゥッ、ププッ・・・プゥゥゥ~~~~~~~~~~~』
「っ、はぁぁぁ・・・・・・・ぅぅ・・・・・・・」
顔面に染み渡る熱い感触に、下半身が共鳴する・・・
なぜだろう・・・?こんなことをされてるのに、死ぬかもしれないのに・・・・・・
僕は、彼女の風に、残酷なオナラに、消し去ることの出来ない興奮を抱いている自分に気づいた。
もっと・・・欲しい?こんなにクサいのに?こんなに苦しいのに!?
自分でも信じられないくらいに、僕は彼女を、彼女のオナラを欲していた。
変わらず僕の心臓をわしづかみにしている、死の恐怖とともに・・・・・・

『プププゥゥゥゥゥゥ~~~~~~~~~~~~~~~~~~・・・』
「・・・・・・・・・・・・」
もはや息も絶え絶えの僕は、胸の奥まで彼女の匂いに染まっているような気分だった。
全身から力は抜け、もはや死すらも覚悟した心境・・・・・それでも僕の股間のものは
別の生き物のようにそそり立っている。

彼女は噴射を止めて、すこし前かがみになると、肩越しに僕を振り返った。
顔面を塞いでいた重みから開放されて、彼女と目が合う。
・・・処刑場で見せた、冷酷な神官の顔、処刑人の眼差し・・・・・・。
「次で、終わりです・・・・・・」
いよいよ終わりか・・・・・・。この儀式か、僕の命か・・・・・・。

僕は静かに目を閉じた
ふたたび圧し掛かってくる柔らかく重い感触。
「受け入れなさい・・・・・・」
『プッシュ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
「ふあ、ぁぁ・・・・・・」
より力強く侵蝕する、彼女の匂い!
臭い!!クサい・・・クサ・・・いっ・・・・・・
もう・・・だめだ・・・やっぱり、ぼくは・・・

「・・・受け入れて、私を・・・・・・」
薄れていく意識の中、最後に彼女の声を聞いた気がした。




目覚めると、手足が開放されていることに気づいた。
部屋の空気も入れ替えられていたけど、起き上がろうとしてもめまいに襲われてままならない。
まだ、体の中に彼女の匂いが残っているような気がする・・・。

「無理なさらない方がよろしいですよ」
扉の方から、水差しとグラスを載せたトレイを抱え、女性が歩いてきた。
さっきの娘とはちがう、もっと大人っぽい長髪の女性だ。
「始めまして、私はフレア。先ほどはココットが失礼な真似をして、申し訳御座いませんでした。
ご気分はいかがですか?」
「あ、僕はハインっていいます・・・・・・ココットって、さっきの?」
「はい。いちおう伝説の殉教者から頂いたありがたいお名前なんですけど・・・・・
名前負けですわね。はい、どうぞ」
女の人・・・フレアさんは柔らかい笑みをみせて、僕に水の入ったグラスを勧めた。
一息に飲み干して。大きくため息をつく。どうやら僕は洗礼を生き延びたようだ。
そう思うと、少し心に余裕が生まれた。
「これで僕も、教団の一員ですね」
「・・・?ええ、あなたがそう望まれるのであれば」

・・・あれ?
「いや僕、さっき洗礼を・・・」
「洗礼?」
フレアさんは怪訝な顔をして首を傾げたが、やがてフフッと笑って言った。
「ココットがあなたにしたのは、恋のおまじないですわ」
「・・・・・・へっ?」
「意中の男性を自分の香りで染める・・・永遠の絆をもとめて、古来より教団の女性たちに
伝わってきた秘術です。昔は不幸な事故も絶えなかったそうですけど・・・」
えっ?ええ!?
一体、どうゆうことなんだ!?

「でも、どうして僕なんか・・・」
とりあえず、一番気になったことを聞いてみる。
フレアさんは、さも楽しそうに教えてくれた。
「あの子は、神殿の雑用として働くあなたのことを、いつも陰からこっそりと見ていたのですよ。
身寄りも無く、日々神官としての修練を積むだけの毎日でしたので、あの子にしてみればこれが
初恋だったのでしょう。あなたの無罪を信じて、救出を買って出たのも彼女ですのよ」

そうか・・・そうだったんだ。
「それじゃあ、秘密とか、戒律とか・・・」
「全部あの子のつくり話でしょう。照れ隠しのつもりだったのでしょうね・・・。
確かに儀式は秘密のものですが、そのためにあなたの命を奪ったりはしません。
それに、一部の好事家には有名な話なんですよ。私たちの秘術に心を奪われる殿方だっている
くらいなんですから」
フレアさんは悪戯っぽい笑みを浮かべて僕を見た。
・・・心の中を見透かされたようで、思わずドキッとした。


ギィッ
部屋の扉が勢いよく開かれた。
彼女・・・ココットだ。
「気がつかれたんですね?良かった!!」
ベットへと駆け寄ってくる彼女に顔を覗かれて、顔が熱くなるのを感じた。
ちょっとだけ、吹き付けられた彼女の熱い『風』のことも思い出して、
なんだか全身が熱くなるようだった。


おしまい

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